「ゼロ時間へ/アガサ・クリスティー」ミステリー史を変えた傑作【あらすじ・感想】

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ミステリー海外

こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
私が大大大好きなアガサ・クリスティーから「ゼロ時間へ」をご紹介します。
今回久しぶりに再読したのですが、犯人も途中経過も分かっていても楽しめました♪

この作品は、ミステリー史を変えた1作なんですよ!
※犯人などの重要なネタバレではありませんが、ちょっとネタバレっぽいところがありますのでご注意ください。

こんな人におすすめ!

・アガサ・クリスティーが好き
・最後まで誰が殺人のターゲットなのか分からない作品に興味がある
・犯人も被害者も分からないストーリー展開に翻弄されたい

あらすじ

2月。ある人物が紙に殺人計画を書き記していた。9月に実行する予定の完璧な計画。
そして、その年の9月。イギリスの田舎、海辺にあるお金持ちの老婦人の館には、休暇を過ごす人々が集まっていた。
ある日、老婦人を訪ねて来た知人の老弁護士が、滞在中のホテルで急死する。やがて、老婦人も撲殺されて見つかった。
予定されていた殺人とは、このことなのか?それとも、もっと他に狙われている人物がいるのか。
いったい誰が、誰を殺す計画を立てているのか――。

見どころ

刻々と0時間へ向かうストーリー

何と言っても、この作品の魅力はストーリーが「殺人を達成する時間=0時間」に向けて進んでいくところです。
それまでの推理小説は
「殺人事件」⇒「探偵が死体や人間関係を調べる」⇒「犯人を突き止める」
の流れで書かれていたのに対して
ゼロ時間へでは、殺人は
「殺人の動機」⇒「計画」⇒「達成」
の流れで起こるという見方で書かれています。(本書が始まるのは「計画」の時点から)
もちろん、誰がどんな計画を立てているのかは分かりません。
読者は、誰が何を企んでいて、誰がいつ殺されるのか、ハラハラしながら読み進めることになるわけです。

犯人だけでなく被害者も誰か分からない

犯人も被害者も誰なのか分からない。分かっているのは、近い未来に確実に殺人計画が実行されようとしているということだけ。
今でこそ、こういう形式のミステリーを見るようになりましたが、クリスティーが書いた当時は、このストーリーに皆さぞ度肝を抜かれたことと思います。
そして、割と珍しくなくなってしまった今読んでも、やはりこのストーリー展開は、面白いです!

見事過ぎる伏線の回収

ちょっとネタバレっぽくなっちゃうのですが。。。
ダメな方は、ここを飛ばして下の方の「感想」へどうぞ。


物語の初めに、自殺しそこねた青年が出てきます。
途中ほとんど出てきませんので、ストーリーが進むにつれてすっかり忘れてしまうのですが、最後の方の重要な場面で出てくるんですよ。
あー、この人物は、ここで出てくるのか!!!って。
彼が自殺しそこねた事が、物語の重要ポイントになってるんですね。
その伏線回収が、鮮やかで楽しかったです♪


感想

この本を初めて読んだときは、とにかく衝撃的でした。
そして、アガサ・クリスティーって、なんて天才なんだろうっ✨と興奮したものです。
殺人を実行する0時間に向かって物語が進むので、最初の方は何も起こりません。
ちょっと人間関係のドロドロが出てくるくらい。
なのに、まだ何も起こらない時間も全然退屈しないんです。
殺人計画を立ててるのは、この中の誰?狙われてるのは?
と、ドキドキしながら読み進めるので、登場人物の何げないセリフも深く裏読みしてしまったり(笑)。
クリスティーの意図に操られて、
分かった!この人が怪しい!✨
いや、違った。💦
あ、じゃあ、この人だ!✨
と、気分は上がったり下がったり。まるでジェットコースターにでも乗ってるような気分でした(笑)。

おすすめポイント

・ミステリー史の転換点となる作品
・犯人も被害者も最後まで分からないストーリー
・なのに全く退屈するどころか、読むのを止められない楽しさ
・見事な構成

あとがき&考察

本当に小さな子どもの頃から推理小説が好きで、片っ端から読んでいました。
子供向けに出版された江戸川乱歩も、シャーロックホームズも、アルセーヌルパンも、当時本になっていたものは多分ほとんど全部読んでいます。
クリスティを読み始めたのは中学生だったと思うのですが、この「ゼロ時間へ」と出会ったときは衝撃でした。
何だろう。オセロが端から一気に全部ひっくり返されてしまったような。
そうなんですよね!殺人は0時間に向かって起きてるんですよ。
殺人が起きるはるか前から事件は始まってるんですよね。

これは計画殺人はもちろんですが、突発的に誰かの言葉に腹が立って殴り殺してしまったような殺人でも同じではないでしょうか。
犯人は、なぜその言葉に腹が立ったのか。事件を起こすずっと前に経験した事のせいで腹を立てずにはいられなかった。
また被害者は、なぜそんな言葉を口にしてしまったのか。やはり、ずっと前の経験から、その言葉を口にせずにはいられない状態だった。
そんな状態の二人が、同じ時に同じ場所に居合わせる運命になり、そのときの状況から言ってはならないひと言が発せられる瞬間が来る。

ルース・レンデルの「ロウフィールド館の惨劇」が、こんな感じの話ですが、この本もまた私の大好きな1冊です。
犯人が、犯行を行わざるを得ない状況にどんどん追い詰められていく様がハラハラドキドキさせられる本です。
参考までに、こちらです。

このクリスティーの「ゼロ時間へ」は、クリスティー自身も自作のベスト10に入れており、江戸川乱歩もクリスティー作品のベスト8に入れています。私自身もアガサ・クリスティーの隠れた名作ベスト6に入れさせていただいている作品です。おすすめです!!!




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