こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
今回「蒼ざめた馬」を再読しました。
「蒼ざめた馬」はアガサ・クリスティー作品の中でも、ちょっとオカルト色のある作品です。
降霊会のシーンなどは、他の作品にも出てきますが、これはもうちょっと異色な感じ。
そして、クリスティらしいなあと感じさせる作品でもあります。
ポアロもミス・マープルも出てこないノンシリーズものなので、通常の探偵ものに飽きたときにお勧めです。
※物語の後半部分まで書いています。重大なネタバレはありませんが、ご注意ください。
あらすじ
夜道で殺された神父が、9人の名前が書かれたメモを持っていた。
その9人のうちの数人はすでに死んでいることが分かったが、一見どれも事件性のない死のようだった。
調査を始めた学者マークは、ある村に住んでいる3人の魔女と呼ばれる人物たちが人を呪い殺すという噂を耳にする。
マークは、魔女たちが住むという「蒼ざめた馬」という館を訪れるが――。
見どころ
マークとジンジャーのコンビ
突然ジンジャーという名前が出てきてすみません。
ジンジャーは、マークが「蒼ざめた馬」のある村で知り合った女性です。
降霊会だとか、人を呪い殺すとか、そんな噂を元に調査しているマークは、自分一人での調査に行き詰ってしまいます。
誰かに相談したくても、彼の周囲にはごく常識的な人間ばかり。
話を笑い飛ばさず、真面目に聞いてくれる相手を探したときに、マークが思いついたのがジンジャーです。
この話は、ジンジャーとマークがコンビを組んでから、グッと面白くなっていきます。
ジンジャーの危機
マークとジンジャーは、さっそく「蒼ざめた馬」が本当に殺人を請け負っているのか調査することに。
9人のリストの人間のうち、何人かが死んでいるとはいえ、とても降霊会で人を呪い殺すなんてことができるはずはないと思っていた二人は、ジンジャーを囮にして実際に「蒼ざめた馬」に殺人をオーダーしてみることにします。
マークが、村からロンドンのジンジャーに電話をすると、最初は元気だったジンジャーの体調が日に日に悪化していくことが判明。
呪いのせいなんかじゃない。何かちゃんとした原因(殺害方法)があるはずだ!
と、マークは焦りながら、謎に挑みます。
この辺りのスリルは、スピーディだし、面白いです!
感想
この作品は好き嫌いが分かれるかもしれません。
まず、ストーリーとは直接関係のないシェイクスピア談義や、作家としてクリスティーが訴えたいことなどが書かれている部分があちこちにあり、正直「ストーリーを進めてくれ」と思わないでもありませんでした。
ようやく面白くなってくるのは、物語が半分近くまで進み、ジンジャーとコンビを組んでからです。
その代わり、ここからの面白さは半端ないですよ!
ハラハラドキドキ、今までの記述の中から犯行方法を見つけ出す楽しみ!
そう。ちょっと退屈と思わせてる前半部分の中には、犯行方法のヒントがチラホラと隠されてるんですよね。
クリスティーは、それを隠すためにわざと延々と関係ない話を書いて、読者の目をそらしていたのかもしれないと、思わずにはいられませんでした。
・探偵役マークと女友達ジンジャーのコンビ
・おとりになったジンジャーの危機
・後半部分の怒涛の展開
あとがき
この作品は、殺害方法が非常に印象に残っていました。
オカルトとか、そんなのじゃなくて、その陰に隠された本当の殺害方法です。
他に印象に残っていたのは、物語の冒頭にカフェで喧嘩していた女性二人のうち一人が、髪の毛を引っこ抜かれるというシーンです。
その場で見ていたマークも衝撃を受けたでしょうけど、(最初に読んだときにまだ中学生くらいだったと思われる)私も衝撃的でした。
ましてや、そのシーンが後半重要になって来るんですから……。
異様な降霊会の描写よりも、この一瞬のシーンがずっと記憶に残っているんだから、面白いものですよね。
コメント