「死が最後にやってくる/アガサ・クリスティ」古代エジプトが舞台の連続殺人【あらすじ・感想】

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ミステリー海外

こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
今日ご紹介するのは「死が最後にやってくる」
「アガサ・クリスティの隠れた名作6選」の記事でもご紹介したとおり、これは私の大好きなクリスティ作品です!

古代エジプトが舞台ですから、警察も探偵もいません
読者は主人公の女性レニセンブと一緒に、誰が犯人なのか、次は誰が殺されるのか、事態に翻弄されながら読み進めていきます。
犯人も動機も手段も、最後にはきちんと解き明かされますが、サスペンス要素も強いです。
そして古代エジプトが好きな人には、特にお勧めしたい作品です!

こんな人におすすめ!

・古代エジプトが大好き
・ノンシリーズ物(ポアロやミス・マープルが出てこない作品)で面白い物はないか
・古代が舞台の殺人事件って面白そう!
・「王家の紋章」が好きだ

あらすじ

結婚8年で配偶者に死に別れたレニセンブは、実家に帰って来た。
墓所守をしている父、兄やその妻たちと弟に祖母など、たくさんの家族がいる家は、8年前と何も変わっていない――そう思っていたレニセンブは、父が若く美しい再婚相手ノフレトを連れ帰って来たことを機に、実はそうではなかったことに気が付く。
傲慢なノフレトが撒くトラブルの種に、家族はいがみ合い、ノフレトを憎み始めた。
やがて、崖下からノフレトの死体が発見され、墜落死だろうということになったのだが――。

見どころ

息をつく間もなく起こる殺人

殺されるべくして殺されて?しまうノフレト。
家族中のみんなが、殺人では?と思いつつも「足を滑らせて転落した事故死」ということで落ち着きます。
警察もいないんですから、これ以上誰も文句は言わずに、ストーリーは展開していきます。
しかし、家族のメンバーやその周囲の人々が、次々と不審な死を遂げ始めるんです。
しばしば「死亡フラグ」が立つので、「ああ、やっぱり」と思ったり、「え?こっちがやられるの?」と思ったり。
話の展開を予想しては、当たったり裏切られたりというミステリーの醍醐味をたっぷり楽しめます

古代エジプトの空気感

この作品には最初から最後まで古代エジプトしか出てきません。
亡くなった人は、ミイラ師の手に渡り、処置を施されて葬られます。
警察もなし、証拠の保全もなし。
犯人は亡くなったノフレトの霊だろうということで、一家の長インホテプは、同じくあちらの世界に行っている亡き妻にノフレトを止めてくれと祈願するんです。
もちろん、犯罪が止まることはなく。
それでも人々は死を受け入れ、淡々と暮らしていきます
その死生観や、人々の暮らし感じ方や考え方など、とても興味深かったです。
全編に流れる古代エジプトのムードが、楽しめます。

意外な犯人

次々と人が殺されて行き、容疑者が狭まって行きますが、犯人はやはり意外な人物でした。
初めて読んだとき(もう数十年前になりますが)、あまりに意外で衝撃を受け忘れられず(笑)。
おかげで今回もしっかりと覚えていました。
犯人の意外性も重要なポイントでしたが、この作品はそれ以外の要素も面白いです。
今回の再読では、犯人を覚えていても楽しめることを再確認しました!

感想

この作品はやっぱり大好きです!
元々私は、「十二国記」や「精霊の守り人」のように世界観のしっかりしている作品が好きです。
「死が最後にやってくる」も同じように、古代エジプトという独特な世界の中での出来事。しかも、ミステリー。もろに私のツボなわけです。
また、この作品は登場する人物も個性があって面白かったです。

奥の部屋に閉じこもったまま、ほとんど出歩かないのに家中の人間のことや出来事について見抜いている祖母のエサ。
反対に、家中をこっそりと歩き回り、家中の秘密を探り出しているインホテプ家の召使ヘネット。
一家から一歩引いたところで世の中を見ている、インホテプ家の管理人であり、準家族の立ち位置にいるホリ。

とにかく飽きません。
個性豊かなメンバーの思惑が絡みあい、次々と事件が起き、犯人が分かりにくい。そして異色な舞台。
私にとっては、ミステリーにおいて、これ以上求めることってないんじゃないかと思えるくらいです。

おすすめポイント

・次々に起こる事件や殺人
・古代エジプトの空気感
・意外な展開と犯人
・個性豊かな登場人物

あとがき

私にとっては、この作品は本当に本当に面白くて大好きで、これ以上のお勧めは無いくらいお勧めなんですが、古代エジプトに興味のない方にとっては、ただの普通の作品なのかもしれないと感じさせられる出来事がありました。

数年前に霜月蒼さんの「アガサ・クリスティー完全攻略」という本を見かけて買ってみたのですが、その中ではこの作品が低評価になっていてショックを受けたんです。
霜月さんは、古代エジプトに興味もないし、博物館などにも関心がないので魅力を感じなかったそうで、この作品は古代エジプトが好きで、当時の建物や人々の服装などをサッと脳内で思い描ける人向けだと感じられたそう。
また、トリックや探偵役がいないことにも物足りなく感じられたようです。

ということで、この作品は、本格派の小説を求められている方には向かないかもしれません。
でも、古代エジプトに興味があって、その世界観を感じ取れる人、本格派じゃなくサスペンス風味のミステリーも大好きな方なら、素晴らしく楽しめると思います!
読む人によって、好みが大きく分かれる作品なのかもしれませんね。
だからこそ、超有名な作品とは違う「隠れた名作」になるんだと思います。

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