「人形館の殺人/綾辻行人」悪夢のような世界に引き込まれる【あらすじ・感想・ネタバレ注意】

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ミステリー日本

こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
綾辻行人さんの館シリーズ4作目「人形館の殺人」を再読しました。

なんというか……これも、また感想の難しい作品ですねぇ。

最初から最後まで、どう書いてもネタバレになりそう。
ですので、一応【ネタバレ注意】とさせていただきます。でも、犯人などの重要なネタバレはしませんので。

基本的に館シリーズは、順番通りに読むことをお勧めしますが、「人形館の殺人」は、これ1冊で独立しているような話になっているので、読む順番はそれほど心配しなくても良さそうです。

こんな人におすすめ!

・綾辻行人さんの館シリーズが好き
・不気味な雰囲気が漂う作品最高!
・悪夢のような世界に迷い込んでみたい

あらすじ

父が亡くなり、残された人形館に住むことになった飛龍想一。廊下の至る所に身体の一部が欠けた、顔のない人形が立っている人形館。そこに住み始めた想一は、やがて何者かに狙われ始める。想一の元に届く脅迫状、近所で繰り返される通り魔事件。想一は、大学時代の友人である島田に助けを求める。

見どころ

一人称

この作品は、今までの館シリーズとは違って、飛龍想一の一人称で書かれています。
彼の目を通して見た人形館や人物が描かれているわけです。
だから主人公が分からないと言うものは読者にも分からないんですよ。
ましてや、この主人公は基本的に死にたがっています。
その辺も、この作品全体に漂う悪夢のような世界を作り上げているのかなあ。

失われた記憶

さらにやっかいな事に、想一は子どもの頃の記憶を一部失っています
そう。だから想一に分からない、思い出せない情報は、読者にも分からないままなんです。

作品の中で、想一が途切れ途切れの記憶を呼び起こすシーンがたびたび出てくるのですが、それがまたじれったい!
その辺に、謎を解くカギがありそうなのに、読者は手がかりがもらえません

物語後半から、さすがに「あれ?」と感じるシーンが出てくるのですが、その頃にはこちらもすっかり想一の悪夢にハマってしまって、抜け出せなくなっているんです。

謎の殺人者

想一の一人称の合間に、謎の殺人者視点のシーンが挟み込まれています。
明らかに想一を狙っている独白がくり返し出てきます。
幼い子供を次々と殺す通り魔でもあるのですが、これがいったい誰なのか。
かなり後半まで、想像つきませんでした。
というか、想像した人物みんな間違ってました。

独自の価値観で、人を殺していくこの人物は、最後には子ども以外の人間にまで手を伸ばし始めます。

誰が殺人者で、次に狙われるのは誰なのか。この辺も面白かったです。

不気味な人形

人形館にある人形は、すべて身体のどこか一部が欠けています。
顔のないマネキンのような人形なのですが、腕が無かったり、脚が無かったり、頭や胴体がないものも。
それが、家中のあちらこちらに(廊下の隅とか)立っているんですよ。
すっごい不気味!
この人形が事件に関係あるようにして、無いようで。
でも、やっぱり良い所で効果的に使われてたりするのが印象に残りました。

感想

今までの館シリーズとは、まったく違った雰囲気の作品。
読んでいる間中、どろりとした悪夢に首まで浸かっておぼれそうになっている感覚でした。
ミステリと言うよりは、ホラーに近い雰囲気かも。それもサイコホラー系。
あとがきの中で綾辻さんが

この作品がある意味でひどくいびつな形をした代物であるから――

人形館の殺人 文庫版あとがき

と、書かれていますが、まさにそれです!
すごくいびつなんです。
だから、悪夢の中にいるような気分にさせられるんですね。
これが、トリックとしてどうなのかは、好みによると思います。
私は大好きです。
この独特の雰囲気が、最高に面白かった!
気持ち良く?悪夢な気分で?すっかり騙されました!

おすすめポイント

・まるで悪夢のようないびつな世界観
・一人称のため手がかりが得られず深まる謎
・謎の通り魔

「人形館の殺人」感想まとめ

館シリーズの中でも、本当にこれ1冊、良い意味で浮いています。
なんなら館シリーズに入れなくても良かったんじゃないの?って思っちゃうくらい。
なので、これ1冊だけ取り出して読んでも大丈夫そうです。

不気味な人形が、あちこちに立ち尽くしている人形館。
記憶を失くしている主人公の悪夢のような毎日。
近所で犯罪を繰り返している通り魔。
そんな、悪夢にずっぽりと浸かって、謎解きを楽しむことができますよ。

館シリーズ他の作品については、こちらの記事でご紹介しています。


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