こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
今回は私のお気に入りのクリスティ作品「無実はさいなむ」をご紹介します。
これも、「ゼロ時間へ」のように、読んで私の目からウロコが落ちた作品です。
「ゼロ時間へ」では、ストーリーが『殺意を抱いたときから、それを実行するゼロ時間へ向かって』描かれているという構成に衝撃を受けました。
この「無実はさいなむ」では、殺人犯として裁かれた家族が無実だったと証明されて困る人々のストーリーです。
初めて読んだのは高校生くらいの頃でしょうか。
単純だった私が『家族が殺人犯のままの方が良かった』というケースもあるんだ!と衝撃を受けた作品です。
そして犯人当てが非常に難しいと感じた作品でもあります。
こちらもノンシリーズものになります。ポアロもミス・マープルも登場しません。
あらすじ
外国での生活から戻ったアーサー・キャルガリは、自分が殺人事件の無実を証明できた人間だったと知る。
犯人とされていたジャッコは、すでに獄中で亡くなっていたが、キャルガリは残された家族にジャッコの無罪を知らせに邸を訪れた。
家族の無実を知って喜んでもらえると思っていたキャルガリは、ジャッコが犯人のままの方が良かったという家族の意外な反応に戸惑う。
そして眠っていた殺人犯人が再び動き出した――。
見どころ
複雑な人間関係
この家族の人間関係は複雑です。なにしろ「家族」とは言っても、子どもたちは全員引き取った子たちで、血のつながりはありません。
ジャッコに殺されたと言われているこの家の「母」レイチェルは、行き場のない子や家庭環境の悪い子たちを何人も引き取って育てていました。
本人は愛情たっぷりのつもりだったけれども、なぜか子どもたちのほとんどから憎まれているんです。
子どもたち同士の関係も、好意を持つもの、毛嫌いするものとさまざま。
そんな中で、レイチェルは殺されていました。
少ない容疑者
外部犯が考えられない状況で、容疑者となるのは家政婦さんや秘書を含めた家族のみ。
ジャッコの無実=家族内に真犯人がいる
ことが明らかになります。
家族同士で疑いあうようになり、再婚するはずだったレイチェルの夫とその秘書の関係も雲行きが怪しくなってしまいます。
第2の犯行
家族に疑心暗鬼をもたらしたことで責任を感じてしまったキャルガリと
身体的な理由から容疑者からは外れている車椅子のフィリップが、それぞれ事件の解決に向かって行動を起こしました。
そんな中、第2の殺人事件が起こるのです。
ラストに向けて事件はめまぐるしく展開していきます!
感想
この作品は、私の中でも上位に入るクリスティー作品です。
あとがきを読むと、ストーリー展開にちょっとした難がある点が書かれていましたが、全く気にならずに楽しめました!
一番面白く感じるのは、やっぱりそれぞれの個性的な人々と、その人間関係です。
愛情いっぱいのつもりのレイチェルが実は嫌われているワケとか、容疑者のひとりであるへスターを犯人だと信じてしまっている彼氏など。
クリスティーが描き出す人たちに
ああ、そういう人っているよね!
と感じさせられて、グイグイ惹きつけられてしまいます。
そして、この犯人!
何度もヒントが出ていたにもかかわらず、分かりませんでした!
容疑者が少ないのに、分からないとは!(笑)
・個性的な人々と複雑な人間関係
・限られた容疑者
・ラストに向けたスピーディーな展開
・当てられない犯人
あとがき
「無実」が人をさいなむというシチュエーションに、まず惹かれました。
初めて読んだ当時、たぶん中学生か高校生だった私は、キャルガリと同じく単純に「なぜ家族が無実だと知ってうれしくないのか?」と思いました。
そして、事件の背景を知って「ああ、そうか!これは、うれしくないわ」「確かにそういうケースもあるよね」と改めてハッとさせられたものです。
そしてこの作品は、犯人を当てるのが難しい作品だとも思います。
言われてみれば、途中で何度もヒントが出ていたと後で気付くのですが……。
こりゃ、やられたわ(笑)って感じです。
犯人当てに挑戦してみたい方、ぜひ読んでみてください!
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