こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
大好きな作家さん、上橋菜穂子さんの「香君」を読みました!
もう、面白くて面白くて、厚い上下巻をあっという間に読んでしまいました。
読み終わりたくない、ずっとこの世界に居たい!と思わせる、さすがの世界感。
たっぷりと楽しませていただきました!
※重大なネタバレはありませんが、途中までを詳しく紹介しています。
あらすじ
どんな場所でも強く育ち、虫にやられることもないオアレ稲。その稲をもたらした「香君」の元、発展してきた帝国だったが、あるとき虫の付かないはずのオアレ稲に虫害が発生する。
人より優れた嗅覚を持つ少女アイシャは、オアレ稲の発する香りの叫びを聞き、その謎に立ち向かう。
見どころ
植物の香りが描く世界
まず、面白いというか印象深いのは、なんと言ってもアイシャの能力です。
通常の人はおろか、香君の能力をもしのぐ嗅覚なんです。
みんなが無いと思っている花の香りを遠くから嗅ぎ分け、土の中にいるさまざまな生物の発する匂いや、ウソをつくときに人が発する汗の匂いまで感知してしまいます。
また、アイシャは目を閉じていても、香りでどこに何があるか分かるので、目をつぶったまま、もしくは、真っ暗闇の中でも支障なく歩くことができるんです。
アイシャが目をつぶって、頭の中に描く香りの世界は、目に見える現実の世界とはまったく違っていて――
その世界がとても魅力的でした!
「いま一番よく聞こえるのは、蕎麦の隣にいる草たちの香りの声です。夏の盛りを過ぎて、少し涼しくなってきたからアブラムシが増えてきていて、食われているんです。痛い、痛い、と、ずっと叫んでいて、うるさいくらいです。
「香君」上巻 P342~P343より
その声を聞いて、さっきから、アブラムシを食べる種類のテントウムシが寄って来て、アブラムシを食べ始めています。」
こんな風に、アイシャだけが感じ取ることのできる世界を、読者も体験できます。
オアレ稲の秘密
初代の香君がもたらしたというオアレ稲は、どんな気候でも育ち、どんな虫にも負けず、味も良いという不思議な稲です。
育てれば、国が豊かになるため、周囲の国々もオアレ苗欲しさに帝国に従います。
ただ、育てた稲からは次の苗が取れず、決まった肥料を使わなければ、毒になってしまって食べられないという特性を持つため、帝国はこの苗を下賜し、肥料を与えることで藩王国を従えているのです。
また、オアレ苗を一度育てた場所や、その近くでは他の穀物が育たなくなってしまうという特性もあり、国のほとんどの地域では、蕎麦や麦は育てられなくなってしまいます。
そのオアレ苗に、居ないはずの天敵の虫が現れた。
すでに蕎麦も麦も育てていない帝国で、オアレ稲が全滅したら、国が滅んでしまう――。
アイシャは、オアレ稲や周囲の草木土の香りから、そのオアレ稲の謎を解こうとするのです。
アイシャ達と天敵の虫たちとの攻防戦も面白いです。
香君とアイシャ
初代の香君には、子供がおらず、香君の死後13年経つと次の香君が選ばれることになっていました。
が、人々から神様と思われていた香君は、実は帝国にとって都合の良さそうな娘を選んでいるだけでした。
選ばれて、力のない自分に苦しんでいる現香君のオリエと、アイシャの交流も楽しいです。
初代香君とは、どこから来た誰だったのか。
どうしてアイシャは、初代香君並みの力を持っているのか。
その辺も読み応えがありました。
また、香君とアイシャ、その周辺の人たちは、オアレ稲に依存させて統治するという方法を危うく感じ、帝国に隠れて他の作物の栽培を進めるんですが、その辺りもワクワクします。
感想
物語の流れも面白かったし、登場人物も魅力的でした!
でも、この話で私が一番魅力を感じたのは、なんと言っても、アイシャが頭の中に描く香りの世界です。
先ほども一部引用しましたが、こんなシーンもありました。
山地の畑に行ったアイシャが、かがんで匂いを嗅いだときです。
この畑は、なんとまあ、賑やかなのだろう。
「香君」上巻 P234より
(中略)
いま、目の前に広がっている畑は、子どもたちの群れのように騒がしい。
仲良く肩を寄せ合って遊んでいる子もいれば、自分の領分に入って来るな、と声高に叫んでいる子もいる――そんな大騒ぎを見ているようだった。
アイシャには、畑の作物たちがこんな風に見えるんですね。
こういう描写はあちこちで出てくるんですが、それがとにかく楽しかったです!
・アイシャと一緒に香りの世界を感じられる
・オアレ稲を虫害から守るアイシャたち
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あとがき
上橋菜穂子さんの作品は大好きで、ほとんど読んでいます。
どれも本当に大好きで、くり返しくり返し読んでしまいます。読んでいる間は、その世界に居られるのが楽しいんですよね。
「香君」も、読み終わってしまうのが寂しくて仕方がありませんでした。
もう、少ししかページが残ってない!と思いつつも、ページをめくるのがやめられない。。。あの気持ちを、またまた味わいました。
ああ、楽しかった!!!
香君の世界への旅、どうぞお楽しみください。
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