こんにちは。ゆっこう(yuccow)です。
綾辻行人さんの館シリーズ6作目「黒猫館の殺人」を再読しました。
この作品もシリーズの順番通りに読むことをお勧めします。
毎回奇想天外なトリックを楽しませてくれる館シリーズですが、今回も「やられた!」って感じでした。
本の表紙裏側に著者のことばが載ってるんですが
前作『時計館』はど真ん中のストレート、今回は外角低めぎりぎりに落ちるフォークといったところでしょうか。
講談社ノベルズ 表紙裏より
だそうです。
むしろ綾辻さんとしては、「消える魔球」を投げようと試みたのだとか。
確かに読んでいて「え。こんなのあり!?」と思わなくもなかったのですが、
細部まできちんと読んでいれば、ヒントはたくさんたくさんあったことを思い知らされました!
さて、あなたは文章のあちらこちらに隠されたヒントに気が付けるでしょうか?
(私はごくごく一部だけ「あれ???」と感じたくらいでした)
※重大なネタバレはしない方針ですが、一応ギリギリのラインに触れる場合があるのでご注意くださいね
あらすじ
泊っていたホテルで火事に遭い記憶を失った老人が、鹿谷の元を訪れて来た。手がかりは、自分が書いたと思われる手記だけだったが、その手記には「黒猫館」で彼が体験した殺人事件について書かれていた。これは小説なのか、実際に有ったことなのか。鹿谷と江南は、黒猫館があると思われる北海道へ向かう。
見どころ
手記のストーリー
小説なのか実際に有ったことなのか、イマイチ分からないままに読み進めることになる手記。
このストーリーが面白くて、ついつい引き込まれてしまいます!
作品の中の一部なんだということを忘れてしまいそうなくらい。
黒猫館の管理人だという老人が、自らの体験を書き留めた形になっています。
館の持ち主の息子が友人と4人で黒猫館を訪れ、老人の日々の静かな生活が一変。
殺人事件と思われる出来事が起きるばかりか、秘密の地下室を発見すると、その中には――
という具合。この手記のあらすじと感想だけでもブログ記事が書けちゃいそうです。
小説の中で、もうひとつの小説を楽しむことができますよ!
手記に隠されたヒントの数々
ところが、面白い面白いと夢中になって読むだけではダメなんですね。
この手記は注意深く読んでいかないと、作者のトリックに引っかかってしまいます!
どこにヒントが隠されているのか、常に目を光らせておかないと(笑)。
もしかすると、作者がヒントに気が付かせないために、この手記をこんなに面白くしたんじゃないかと疑いたくなりました!
黒猫館の違和感
さて、そのヒントですが。
江南くんも手記を読んでいますが、細部までは覚えておらず、後半すっかり騙されてしまいます。
親切なことに、読者向けには黒猫館の間取り図が載っているので、江南くんよりは有利です。
館シリーズは、まず最初に間取り図が出てくるので、私は小説を読むときに楽なようにと間取り図をある程度覚えることにしています。
黒猫館の殺人も同じく、最初に間取り図をじっくりと見たのですが、そこである大きな違和感を覚えました。
普通の人でも感じることだと思うのですが、私は「不動産業の仕事をしていたことがあるので余計にそれを感じた」とだけ言っておきますね。
これ以上書くと、重大なネタバレになってしまいそうなので。
感想
ホントにこの館シリーズは、毎回毎回、斬新なトリックを使うなぁ~~~!と言うのが第一印象。
私は、鹿谷さんと江南くんが、北海道の館を訪れた時点で「あれ?」と気が付きましたが、
それはもしかすると不動産業に携わっていたからかもしれないし、
再読なので、すっかり内容を忘れたつもりでも記憶の片隅にトリックが残っていたからかもしれません。
それでも、あんなに大きな規模のトリックだとは思いもつきませんでした!
いやあ。やるなあ、館シリーズ!
やるなあ、中村青司!
・小説内小説の面白さ
・各所に埋め込まれたヒント
・大胆なトリック
「黒猫館の殺人」感想まとめ
読み終えてから、あらためて作者のことば「この作品は外角低めぎりぎりに落ちるフォーク」に納得しました!
確かに、この作品は直球ストレートではありません。
そういう意味では好みが別れるかも。
私の好みで言えば、直球ストレートの「時計館の殺人」の方が好きですが、この作品もすごく楽しめました。
手記から感じられる独特のムード(というか、黒猫館に漂う独特の雰囲気なのかも)を堪能させていただきました!
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