「水車館の殺人/綾辻行人」ラストの一文にぞっとさせられる【あらすじ・感想】館シリーズ2作目

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ミステリー日本

こんにちは!ゆっこう(yuccow)です。

知念実希人さんの「硝子の塔の殺人」を読んで、綾辻行人さんの「十角館の殺人」を読み、館シリーズにハマった方。
館シリーズの2作目は、この「水車館の殺人」ですよ。

綾辻行人さんの館シリーズは、順番通りに読まないと、結構なネタバレもありますので、書かれた順に読むことをお勧めします

今度の舞台は、水車を備えた不思議な造りの館です。
建物のほとんどが廊下でできています。回廊がぐるっと中庭を囲んでいて、居室として使われているのは、北東と南西の2か所だけ。

物語は、「十角館の殺人」で登場した島田潔が登場する「現在」と、殺人事件の起きた1年前の「過去」が交互に語られていきます。

今回も、最初から最後まですっかり騙されてしまいました!

こんな人におすすめ!

・本格ミステリ最高!
・どんでん返しは外せないよね
・舞台はやっぱり不気味な○○館じゃないと!
・綾辻行人さんの館シリーズにハマった

あらすじ

中村青司が建てた水車館。そこに住むのは、事故で焼けただれた顔に仮面をつけた車椅子の主人と、若い美少女だった。
1年前に、殺人事件が起こり、さらに一人の男が密室からいなくなっていた。
消えた男の友人である島田は、水車館を訪れて、過去の謎を解こうとする。
過去の殺人事件について考察する中、やがて、現在でも殺人事件が起きる。

見どころ

どんでん返し

この物語は、島田のいる現在のストーリーと、1年前の事件当時のストーリーが同時に進行していきます。
殺されたり行方不明になったりした人以外は、登場人物もほとんど一緒です。
島田が過去の事件について、関係者(館に滞在している人々)から話を聞いて考察するのですが、この過去と現在の2本立てがくせ者です(笑)。
うっかりすると(うっかりしなくても)物語の最初から作者の術中にハマってしまうんですよ。
で、謎解きの場面でのどんでん返しで「え!やられた!」と思ってしまうわけです。

印象的な登場人物

○○館というだけで、十分不気味なんですが、「水車館の殺人」は、登場人物も独特です。

表情のない仮面をつけ、車椅子に乗った藤沼紀一
かなり年下の、少女としか呼べないような妻の由里絵
館に忠実な執事。(主人ではなくて館に忠実なんですよ)

特に、この美少女妻の由里絵が印象的です。
幼くして身寄りを失い、水車館の主人である藤沼に引き取られた彼女は、やがてそのまま妻になりますが、この水車館に幽閉されたような状態です。
水車館の敷地から出ることもなく、学校にも通わず、友人も作れず、果てにはテレビもない生活。
そのせいか、彼女はほとんど自分から話すことも行動することもありません。

彼女だけが、彼の心の支えだった。(中略)彼女を閉じ込め、そして彼女を独占し続けることだけが、今や彼に、生きる意味を与えてくれる。

水車館の殺人 第十章 過去「藤沼紀一の書斎」より

紀一は、由里絵を閉じ込めて自分だけのものにすることで、なんとか生きてるんですね。
この歪な状態が、物語全般に不気味な雰囲気を感じさせます。

ラストの一文

水車館の主、藤沼紀一の父は、鬼才の画家・藤沼一成です。
その一成が最後に描いた幻の絵についての話が最初から最後まで出てきます。
紀一が見たくないし、他人にも見せたくないからと秘密の場所に隠しているこの大きな絵。
登場人物たちは、どんなに切望しても見ることができません。
その絵がようやく登場するラストシーン。

最後の一文は衝撃的です。

読んだ瞬間に、背筋がゾワッとしました。

感想

ゾッとするほど恐ろしくて悲しい話でした。救いがないというのかなあ。

ミステリとしては、非常に面白かったです!
最初からすっかり騙されてしまいました。
最後の最後まで犯人は分からなかったし。

実は、過去と現在を行き来するこのストーリー。途中でごっちゃになって、何度か訳が分からなくなってしまいました
登場人物もほぼ一緒だし、1年違うだけで日付も一緒で、天候も一緒なんですもの!
もちろん、読み終わってみれば、それも作者の作戦のひとつだったのかも……と、納得!

とにかく鮮やかに騙されてしまいました!気持ち良く!

悔しいので、アラがないのか探しながら2回目を続けて読みなおしましたが……。
すみません。分かってみれば納得の表現になってるんですね!気が付かない私が愚かでした。

おすすめポイント

・「やられた!」と思わされるどんでん返し
・不気味な雰囲気の漂う館と、印象的な登場人物
・最後の最後まで気を抜けないラスト

「水車館の殺人」感想まとめ&あとがき

実は再読したのは20年ぶり以上で、ストーリーも犯人もすっかり忘れていたので、フレッシュな気分で?楽しめました!
そして、再び館シリーズにハマっています。
当時「そうそう!こういうシリーズをもっともっと読みたかったんだよ」と次々買って読んでいたのを思い出しました。
20年も経つと、転勤やら災害やらで本棚の本も少なくなり、館シリーズは「十角館の殺人」と「時計館の殺人」しか手元にありませんでした。
「水車館の殺人」は図書館で借りてきました。
ところがこの本、閉架になっていたんですよ。図書館の倉庫にしまわれちゃってたの。
借りる人がいなかったのでしょうか。こんなに面白いのに!もったいない!
ということで、「十角館の殺人」を読んだみなさま、ぜひ次は「水車館の殺人」を読んでみてくださいね。

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